教えて中川先生! 血液検査で“再検査”と言われたら?

血液検査の結果数値は、一般の方にはわかりにくいものです。健康診断などで、数値の異常や再検査の結果が出た場合はとても不安になるものですが、検査項目についての知識が少しでもあれば、いたずらに心配することも少なくなります。そんな基礎知識を簡単にご説明しましょう。

「赤血球が少ない」「貧血:要精密検査」と指摘されたとき

動悸、以前は上れた階段を休憩しないと上れないなど、労作時の呼吸困難を認めたとき

「精密検査」と言われるとびっくりされると思いますが、ヘモグロビン濃度が基準値よりも下回っている場合に「貧血」と判断されて「要治療」や「要精密検査」の指示があります。

ヘモグロビンは全身に酸素を運ぶ役割を果たすタンパク質の一つ。不足すると貧血状態になり、動機や息切れ、顔が青ざめるなど体調不良の原因になります。ゆっくり進行している場合は、症状がはっきりしないこともあります。また、味覚異常や爪の変形、足の浮腫でみつかることもあります。

健康診断の場合、基準値が少し厳しく設定されている場合も多いので、要精密検査と言っても、かならずしも深刻な病気が隠されている訳ではありません。

貧血の原因としては血液疾患のほかに、出血(消化管、婦人科領域)、腎不全、膠原病、慢性炎症など様々な疾患で起こりえます

まずは、貧血かどうかを診断するとともに、赤血球数やヘモグロビン濃度を調べる血液検査を行ないます。また、MCVという赤血球の大きさをみることで、原因の推測をいたします。

たかが貧血と言わずに、貧血を起こす原因の検索を進めることも重要です。

「赤血球が多い」「多血症」「赤血球増加:要精密検査」と指摘されたとき

赤血球は、血液の主成分です。全身の細胞に赤血球のヘモグロビンは酸素を結合させて運び、二酸化炭素を回収する働きがあります。赤血球の数が多すぎると、血管のなかに赤血球がひしめき合っている状態(多血症)で、血液の流れが悪くなり、血管が詰まりやすくなります。

赤血球数は、運動(無酸素運動が多い)、喫煙をすることで数値が高くなる可能性があります。嘔吐や下痢などが原因で脱水症になっている場合も数値が高くなることがあります。また、ジョギングなどのスポーツやサウナなどの大量に汗をかいた後など、体内の水分量が減っていると通常よりも高い値になります。ストレス、高血圧、肥満なども関係いたします。

採血検査で赤血球数、そのほかの血液の細胞の状態も確認し、骨髄増殖性疾患などがないかを確認いたします。また、肝脾腫がないかなど腹部超音波検査を行います。

「白血球が少ない」「白血球減少:要精密検査」と指摘されたとき

「白血球が少ない」という検査結果、これは一体どういうことなのでしょうか?

一番気になるのは、白血球が少なくなることによる体への影響ではないでしょうか?

白血球は体の防御反応に大きな影響を与えています。また、白血球が減少していると免疫力が低下しているため、健常者と比べて感染症にかかりやすくなってしまうこともあります。

白血球の数値は個人によって差があり、基準値から外れた結果が出ることがよくありますが、白血球が減少する原因として多いのは、ウィルス感染や薬剤の影響などもあります。健康診断の日に風邪をひいていた場合などは、白血球が少なくなることもあります。また、他の病気で内服している薬が数値に影響することも考えられます。

白血球減少で注意したいのは、まれに命にかかわるような血液疾患などの重篤疾患がかくれている可能性があることです。そのために、まずは採血で血液疾患、膠原病、感染症などがないか確認する必要があります。

「白血球が多い」「白血球増加:要精密検査」と指摘されたとき

最も頻度が高いのは細菌による急性感染症で、白血球の中の好中球が増えます。アレルギーでは、白血球の中の好酸球が増えます。また、副腎皮質ステロイド薬などの薬剤で、白血球が増えることもあります。健康でも基準値から外れる人もあり、白血球数が多いことが必ずしも異常でないこともあります。また、運動、喫煙、精神的ストレス、妊娠などにより白血球が増えることもあります。

採血検査では、白血球数のほかに、血液像(白血球分画)といって白血球の種類(好中球、リンパ球、単球、好酸球など)の割合、異常細胞がないかも同時に確認します。そのほかの赤血球、血小板の数も確認し、白血病、骨髄増殖性疾患などの血液疾患がないかを確認いたします。感染症、膠原病なども場合によっては採血で検査いたします。また、肝脾腫がないかなど腹部超音波検査を行います。

「血小板が少ない」「血小板減少:要精密検査」と指摘されたとき

血小板は血液の成分の一つで、血管の損傷に反応し、出血を止める働きをしています。怪我をしたあとで自然に血が止まるのは、この血小板が正しく機能している証拠です。血管が破れると、血液中の血小板がその穴の部分に次々と集まってきて穴をふさぎ、やがて固まっていきます。

血小板数が減少する、または、その機能が低下すると、出血が止まりにくくなります。ちょっとしたことで青あざができたり、ぶつけてもいないのにあざができたり、出血がなかなか止まらなかったり、鼻血が出やすいなどの症状がみられることがあります。

血小板数はウィルスなどの感染症、薬剤などでも減少することがあります。血液疾患、膠原病、甲状腺疾患などでも減少することがあります。また、ピロリ菌感染症が背景にあることもあります。

採血で血小板数を確認し、他の白血球、赤血球などの異常がないかを確認します。膠原病、肝疾患などでも血小板数が減少することがあるので、採血で確認することが必要です。

また、脾腫などで血小板数が減少することがありますので、腹部超音波検査などを行います。

「血小板が多い」「血小板増加:要精密検査」と指摘されたとき

血小板の数が多くなりすぎると、血液が固まりやすくなり、血液が固まってできた血栓が血管をふさいで、脳梗塞や心筋梗塞などの危険性が高くなります。血小板数が多すぎることで正常に血小板が機能しなくなり、逆に出血しやすくなることもあります。

骨髄増殖性疾患などの血液疾患による血小板増加のほかに、慢性炎症、感染症、出血などでも血小板数が増加します。

採血で血小板数を確認し、他の白血球、赤血球などの異常がないかを確認します。また、体のどこかに炎症などがないか、確認のために採血を行います。血小板増加を伴う血液疾患では、脾腫を認めることがありますので、腹部超音波検査などを行います。

紫斑(あざ)、出血傾向(血液が止まりにくい)などを認めたとき

血管が破れると血管の収縮が起こり、傷口を小さくします。次に血液中にある血小板が傷口に集まってきて、血小板による血栓(けっせん)を作り、傷口をふさぎます。これが一次止血(血小板血栓)と呼ばれるものです

血小板だけの血栓(一次止血)だけでは、血を止めるには脆くて不安定です。そこで、一次止血に引き続き、血液中の凝固因子と呼ばれる一群のタンパク質が働き、最終的にはフィブリンの網の膜が血小板血栓の全体をおおい固めて止血が完了します。これを二次止血(フィブリン血栓)と呼んでいます。この過程になんらかの異常をきたすと、血液が止まりにくくなり、紫斑、鼻血や月経などの出血傾向が認められます。

この場合、採血で血小板数を確認し、他の白血球、赤血球などの異常がないかを確認します。また、前述の凝固因子が不足してくるとPT(プロトロンビン時間)APTT(活性化プロトロンビン時間)などの異常がみられ、採血で確認することができます。

ワーファリンなどの血液をサラサラさせる薬が効きすぎると、同じような症状が出るので注意が必要です。

リンパ節腫脹を認めたとき

頸部、わきの下、足の付け根(そけい部)の皮膚の下にぐりぐり(皮下腫瘤)を認めた場合、リンパ節が腫れていることを考える必要があります。正常リンパ節の大きさは通常直径1cm以下であり、これを超えるリンパ節はリンパ節腫脹と考えます。

1cm以下のリンパ節腫大は悪性のことは少なく、3cmを超えると注意が必要です。また、4〜6週間以上持続しているリンパ節腫脹、特に短期間で急速に増大し、発熱などの全身症状を伴う場合は注意を要します。

数日のうちに急速に腫脹し、痛みがある場合は感染症などの急性炎症の場合が多いです。

リンパ節腫脹は細菌、ウィルス、結核などの感染症、リンパ腫などの血液疾患、膠原病などで認められることがあります。採血、表在超音波検査でリンパ節の大きさ、数などを確認いたします。